MKパフォーマンスラボ

調布市のメンタルコーチ・ビジネスパフォーマンス強化

信じる力のメカニズム;予想が自分自身に与える影響

「信じる力」はNLPの文脈にとどまりません。データサイエンスやビジネスにも通じるメカニズムがあります。

私はAI・データ領域のプロでもあるのですが、信じる力が結果に影響を及ぼすというのは、実はデータの視点でも納得感があります。

信じる力が結果に影響を与える、というと、一般的によく知られているのはNLP的な文脈だと思います。良い未来を信じれば、良い兆候を探すようになり、自然とチャンスを掴みやすくなる。逆に悪い未来を信じれば、悪い兆候を探し良い兆候を見逃す。だから良いイメージを頭にしみつかせよう、というものです。

ですが実は、データとビジネスの文脈から考えても、全く同じことが言えるな、と思うのです。

信じたものが見える「メカニズム」

近年よく語られていますが、一般的なイメージとは異なり、データはあまり客観的なものではありません。データにできるだけ客観性を持たせたり、データを客観的に共有したりということはできるのですが、データそれ自体はとても主観的に設計されます。

なぜなら、主観的なデータのほうが目的を果たす上で機能するからです。逆に、目的や意図を持たずに作ったデータは役に立たないのです。

データは目的に応じたものでなくてはいけません。目的や意図に関連の強いであろう要素に絞って着目し、目的や意図の検証に寄与するであろうサンプルの集め方、測定方法、評価の尺度を決めます。そのようにして「解釈ができ、それを知れば予測・予想の役に立てられる」データの構造が出来上がります。

そういう設計意図を持たず、単に集めただけのデータは厳しい言い方をするとゴミの山であり、そこからは何も示唆は得られません。仮にそこから相関や高精度の予測のような「示唆っぽいもの」が見つかったところで、解釈できないし、無理に解釈したところで誤った判断を招きます。

アイスの売れ行きを予測するのに、株価を測る人はいませんよね。(…もしかすると全く寄与しないわけではないかもしれませんが、適用できる状況は極めて限定的でしょう。)

他に優先して測るべき要素があるはずです。測定するデータには星の数ほど選択肢がありますが、私たちは気温や天気などの要素を選ぶでしょう。それは「アイスをもっと売りたい」「暑い時期ほど冷たいアイスを食べたくなるはず」といった目的、意図や予想のシナリオがあるからです。

ほかの人は別のポイントに着眼するかもしれません。もし自社にすでに有力なチョコミントのラインナップがあり、チョコミントの人気がまだ続くと仮定してそこに商機を見出そうとする人なら(例えば、一時的なブームに乗っておいしさや爽快さが再認知され定着した、一時的なブームが過ぎ去って他社が撤退し独占できるかもしれない、など)、今年のチョコミントに関する同月比の売れ行きのトレンドを見たり、SNSの動向からデータを得ようとするかもしれません。

もしチョコミントではなく「映え文化」に商機を探す人ならば、チョコミントの他にも、派手な色のブルーハワイ・バー(架空のアイスです)のようなアイテムのトレンドに、データを集める意味が出てくるかもしれません。

この場合、あずきバーはデータを取る意味がなさそうですよね(氷よりあずきがはるかに多い「やりすぎあずき」みたいな見た目に訴えるアイテムがあれば別として)。あずきバーのデータがあったところで、「チョコミント文化」の視点や「映え文化」の視点を持っている人にとっては、このデータを解釈して予測に役立てることができないからです。

でも、「昭和レトロな渋いアイス」や「なつかしさ・郷愁」に商機を見出そうとする人にとっては、あずきバーのトレンドは一転して、注目するに値するデータになるのです。同じデータですが、解釈して先行きを予測することができます。

昭和レトロの文脈を獲得すると、「映え文化」に注目する人にとっても、あずきバーのデータに価値が出てきます。昭和レトロの文脈がなければ、このデータに注目する価値はなく、解釈もできませんでした。

ほかにも、あずきバーやチョコミントを「氷菓子か、乳製品か」で見る人もいるでしょう。もし温暖化と気温や天気、季節の年次のトレンド(例えば、寒くなるのが年々遅くなってきているかも)をアイテムを関連づけて考えるなら、あずきバーやチョコミントの動向から、いつ氷菓子を減らし、乳製品やもなか・ケーキ系を増やすか、というデータを得ようとしてもおかしくありません。

また、ここまであまり細かい説明をしませんでしたが、短期・長期でデータを見ようとしているか、自分の範囲内での比較なのか、他との比較なのか、という視点でも色々な解釈の形があったと思います。

ですので、その人の目的や意図、立場といった主観的なシナリオによって予測に役立つデータは変わり、どのデータに注目すべきなのか、同じデータをどう解釈するのかが大きく変わります。アイスの売れ行きでいえば、気温や天気のようにオーソドックスな要素もそれなりにある一方で、それだけでは不足ですし、あらゆる問題を解決する唯一正解のデータセットがあるわけでもありません。目的や意図、立場、「何を信じているか」によってデータの解釈や価値が変わります。

私たちの頭の中に先にシナリオがあり、予測モデルがあるのです。そしてそのモデルを動かすために必要なデータを集めていき、予測を実行し、アップデートします。

私には、これはビジネスの世界にも個人的なマインドの世界にも適用できる、共通のメカニズムであり、そして人間にとって合理的なメカニズムのように思えます。

信じる力のメカニズムとパフォーマンス

私たちはどんな予想のシナリオを持っているのか、自覚した方がいいのは明らかです。

この場合、信じる力は「予測バイアス」と解釈できます。

どんな悲観的なシナリオを、いくつ持っているのか。どんな楽観的なシナリオを、いくつ持っているのか。気を緩めるとすぐ頭に浮かぶ、支配的なシナリオは何か。

どのシナリオを信じるのが良いだろうか。私たちは信じたシナリオのためにデータを集めて、予測をします。信じていないシナリオのデータは解釈ができず、予測できません。

それは、不安や悲観のためにどのくらいリソースを割り当てて行動するのか、期待のためにどのくらいのリソースを割り当てて行動するのか、ということに繋がります。

これは、自分が今何を信じて、何のために行動しているのか、を知るためのメカニズムです。同時に、これから何を信じて、何のために行動するのかを選ぶ戦略的スキルです。

どのくらい期待のために行動しているか。どのくらい不安のために行動しているか。どうバランスを取りたいか。そもそも自分の無意識のバランス感覚を自覚しようとしているか?

どう役立てるか

このような視点をセルフ・リグレッションに取り込むことで、私たちは不必要に不安に駆られたり、過度に希望的観測に執着したり、ということを回避できます。

そして、有力なシナリオを選び、自分のリソースのポートフォリオをコントロールしながら適用して、自分のビジョンを現実のものにするために行動し続けることができるでしょう。

私のセッションでは、クライアントのみなさんの挑戦やパフォーマンス管理を上記のような観点をふまえてサポートします。必要とする方には定期的にセルフ・リグレッションやリソース管理の機会を設けたり、また、シンプルな問答や時にはビジュアライゼーションのような取り組みを通して、信じるものが何かを形作り再確認することをお手伝いします。関心があればご連絡ください。